仕事で法人税の知識が必要な人
『仕事で法人税を使うから、しっかり勉強したいと思っているんだけど、世の中に法人税に関する本が多すぎて、どれを選べばいいか分からない。どんな本で勉強するのがいいのかな。おすすめの本があれば知りたいな。』
こんな疑問にお答えします。
✓この記事の想定読者
・会計事務所で働く実務家の人
・会社で法人税の担当になった経理
・税理士や科目合格者で、法人税実務の知識を必要としてる人
こんにちは、元4大税理士法人の税理士、まぐすです。
この記事では、実務で法人税の知識を必要とする人に向けて、実用的なおすすめ本を厳選して紹介します。
✓この記事の信頼性
この記事を書いている僕は、4大税理士法人・5大総合商社・大手金融で、法人税をメインに働いてきました。
自分自身のために、実用的で優秀な本を探していただけでなく、各会社で研修講師や指導係も担当していたため、初心者からかなり専門的な分野まで幅広く、おすすめ本をずっと探してきました。
こんな僕が、特におすすめする法人税に関する本を、以下の目的・特徴に合わせて厳選して10冊紹介します。
ぜひ、自分の目的に合わせて、自分にあった本を見つけてみてくださいね。
それでは、紹介していきます。
📓もくじ
法人税を実務で使う人が読むべきおすすめ本
「法人税」と一言で言っても、目的別に様々な本が出版されています。
「基礎」「細かい解釈」「申告書作成」など、、、
かなり悩みましたが、目的を4つに分類して、10冊(+かなり専門的な本5冊)に厳選しました。
4つの区分とは、以下の通りです。
✓おすすめする本の4つの区分
区分①:初心者におすすめの本
区分②:実務で絶対に必要な本
区分③:申告書の作成方法を知りたい人向けの本
区分④:その他
まず結論からお伝えすると、以下の10冊があれば法人税はほぼ網羅できます。
初心者におすすめの本① | 法人税申告書のしくみとポイントがわかる本 |
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初心者におすすめの本② | イチからはじめる法人税実務の基礎〔第4版〕 |
初心者におすすめの本③ | 図解 法人税(令和元年版) |
初心者におすすめの本④ | 第4版 基礎の基礎 1日でマスター 法人税申告書の作成 |
実務で絶対に必要な本① | 法人税 決算と申告の実務 令和元年版 |
実務で絶対に必要な本② | 法人税基本通達逐条解説 (九訂版) |
申告書の作成方法① | 瞬殺! 法人税申告書の見方~ここだけ見ておけば大丈夫! ~ |
申告書の作成方法② | 令和元年版/STEP式 法人税申告書と決算書の作成手順 |
申告書の作成方法③ | 法人税別表4、5(一)(二) 書き方 完全マスター 第4版 |
申告書の作成方法④ | 令和元年6月改訂 別表四・五(一)を中心とした 法人税「申告・修正申告・更正後の処理」の実務Q&A |
上記は、各目的ごとに、難易度が簡単なものから順に並べてみました。
おすすめ本を選ぶ基準
この記事で紹介するおすすめ本を選んだ基準は、以下の通りです。
✓おすすめ本を選んだ基準
ポイント①:網羅性があるか
ポイント②:端的にまとまっているか
ポイント③:明確な根拠も記載されているか
ポイント④:改版されているか
ポイント⑤:著者は実績があるか
上記のポイントを押さえた本が、実務で生かせる本です。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、気になる人はぜひご覧くださいね。
それでは、以下で詳しくおすすめ本を紹介していきますね。
初心者におすすめの本
まずは、「法人税は初めて勉強します」「大学のときに少し勉強したくらい、、、」という法人税初心者向けの本を紹介します。
『法人税申告書のしくみとポイントがわかる本』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/6/19 |
この本の特徴
「法人税ってどういうものか」「法人税って、どうやって計算されるの?」という、法人税の基礎がやさしく解説されている本。
法人税は、会計が基礎になっているけど、独自の計算方法があります。
そんなところが体系的に理解できる本です。
出版は少し古いけど、法人税の基本的な構造や考え方は変わってないので、読んで損はないと思いますよ。
読み方
一つひとつを覚えるというよりも、全体を何度か流し読みするだけでもOK。
まずは「法人税」の全体を把握するところから始めてみるのがおすすめ。
「最初の1冊」と意識して、早めに読み終えちゃいましょう。
『イチからはじめる法人税実務の基礎』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/6/19 |
この本の特徴
こんな人におすすめの本。
『理論』と『実務』の違いを理解するには、この本があればより簡単に理解することができると思いますよ。
出版もかなり最近なので、「これからすぐ実務につきます!」という人は、まずはこの本から始めても損はないと思います。
読み方
「大学で少し税金の勉強しました」「税理士試験で法人税ちょっとやりました」
僕自身は、こんな感じの新入社員の方に、まずは一読してもらうような使い方をしています。
「辞書代わり」というよりも、『知識≠実務』ということを理解するための読み物として、「へぇ~実務ってこうなんだ」という意識で読むと頭に入りやすいと思いますよ。
『図解 法人税(令和元年版)』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/7/17 |
この本の特徴
こんな人は、必ず持っておくべき本。初心者は、特に“絶対”です。
この本は「網羅的で無駄がなく、根拠が明確」という万能型の本です。
長年実務で活躍されている人でも、「常にこの本を手元に持っているよ」という人が多くいます。
読み方
この本は、これまで紹介した本に比べるとボリュームがあります。
なぜなら、法人税に関連する項目すべてが網羅的に説明されているからです。
さらに、各項目の条文番号も掲載されているので、「より詳しく知りたい」という人が深くリサーチするのにも便利。
とはいえ、それぞれの項目が初心者でもわかりやすく解説されています。
そのため、1~2回目は一通り目を通して、その後は実務で必要な都度、細かく読んでいくというのがおすすめ。
「いや、もっとガッツリ勉強したい!」という人は、この本1冊を5~6回ちゃんと読めば、法人税の各項目の概要と、「分からないときの調べ方」も理解できますよ。
『第4版 基礎の基礎 1日でマスター 法人税申告書の作成』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/10/15 |
この本の特徴
この本は、法人税の申告書の“本格的な”作成作業に入る前に、ぜひ読んでおきたい本。
法人税の申告書に関して、「一番やさしく・分かりやすく」解説している本だと思います。
すでに上記で紹介した本で、①法人税全体を大まかに把握、②細かな点も大まかに調べられる武器を手に入れた、という段階になっっています。
そのため、この本を読んで「どのように法人税申告書が作られるのか」を把握するのがおすすめです。
読み方
「法人税の申告書が、どういった流れで作られるのか」ということを意識しながら、「調べながら読む」というよりも「一気に全部」を読み終えてもらいたい本。
正直、「1日でマスター」というのはちょっと難しい気がします。
でも、1~2週間あれば、申告書作成の基礎は十分にマスターできると思いますよ。
実務で絶対に必要な本
ここでは、「実務で絶対に必要な本」を厳選して2つ紹介します。
「実務向けの本」は、星の数ほど存在します。でも、「何年もずっと使える本」というのは数少ない。
そこで、「実務でずっと使える、本当に重要な本」に厳選して紹介します。
『法人税 決算と申告の実務 令和元年版』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/10/30 |
この本の特徴
一言で言うと、「辞書代わりに使う本」です。
法人税に関して、この本に載っていない項目はないってくらいです。
「網羅性」「分かりやすさ」「根拠の明確さ」について、これよりも使える本はないと思います。
4大税理士法人から個人の会計事務所まで、「この本を持っていない、、、」という税理士はいないんじゃないかというくらい、大切な本です。
読み方
「辞書代わり」に使う本なので、すべてを読む必要はありません。
「常に手元に持っておいて、分からないことがあったら該当ページをじっくり読みこむ」という使い方がいいと思います。
「分からなかったらネット調べちゃう」という実務家も多いと思います。
ですが、そうではなくこの本をちゃんと読めば、「分からないこと」「根拠が不明確なこと」はなくなりますよ。
『法人税基本通達逐条解説 (九訂版)』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/6/27 |
この本の特徴
この本は、「法人税基本通達」をさらに詳しく解説している本です。
実務初心者は知らない人も多いですが、何年か経験している実務家なら、誰もが知っている重要な本です。
基本的な通達は、毎年改正されるようなものではないので、一度買ってしまえば長年重宝する本です。
「理屈は分かってるけど、実務の現場で判断するのが難しい、、、」と思っている人に、特におすすめです。
読み方
「あれ、この通達って今回のケースに当てはまるのかな、、、?」
こういったことって、実務ではよくあると思います。
こうした場合に武器となるのが、この本です。
この本で通達の背景や具体的解釈を理解すれば、だいたいの事例は解決できますよ。
申告書の作成方法を知りたい人向けの本
ここまで紹介した本で、「基本的な知識」「分からないときの調べ方」が身に付けられます。
そこで、ここでは『実際の法人税申告書の作成』に生かせる本を紹介します。
『瞬殺! 法人税申告書の見方~ここだけ見ておけば大丈夫!』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/8/16 |
この本の特徴
この本は、法人税申告書の中でも「特に重要な別表」に絞って、実際の別表を掲載しながら詳しく解説されている本です。
法人税申告書といっても、そのボリュームは相当。
でも、いつも必要になる重要な別表って、いくつかに限られます。
この本を読めば、そんな重要な別表の「どこをチェックすればいいのか」が分かります。
かなりシンプル化されているので、「細かく理解する」というよりも、「ポイントを絞って大まかに把握したい!」という人におすすめ。
読み方
この本は、「実際に申告書を作成したことがない」という人が、最初に読むべき本です。
おすすめの読み方は、国税庁ホームページで該当する別表を見ながら読むことです。
実際に作成することをイメージしながら読むことで、より実務で生かせると思いますよ。
『法人税別表4、5(一)(二) 書き方 完全マスター 第4版』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/2/10 |
この本の特徴
どんな会社でも、法人税のメインとなるのが別表4、5(一)(二)。
でも実は、一番苦戦しがちなのがこの別表4、5(一)(二)だったりします。
そのため、別表4、5(一)(二)を詳しく解説している本は、1冊は持っておくと安心。
この本は、そんな別表4、5(一)(二)の書き方について、ケーススタディ形式で詳しく紹介してくれている本です。
単純な調整項目だけでなく、「組織再編」や「修正申告」など、実務ならではの難しい項目についても、かなり細かく解説してくれています。
「早く一人前になりたい!」そう思う人はマストアイテムです。
読み方
この本は、一度じっくり読んでみるのがおススメ。
実際の申告書にどのように記載すべきか、図や表を交えながら細かく説明してくれているだけでなく、ケーススタディ形式なので、自分で別表を作成する練習にもなります。
時間があれば、何度かじっくり読み込めば、かなり実務家として成長できると思います。
その後は、手元に置いておいて、難しい事例があったときに、辞書代わりとしても使うことができますよ。
『令和元年6月改訂 別表四・五(一)を中心とした 法人税「申告・修正申告・更正後の処理」の実務Q&A』
読みやすさ | |
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情報量 | |
発売日 | 2019/7/30 |
この本の特徴
実は、何年も税理士業界・会計事務所で働いている人でも『修正申告やったことないや、、、』『修正申告ってよくわからない、、、』という人が、かなり多くいます。
そんな人にもおすすめなのが、こちらの本です。
法人税の修正申告の作り方だけでなく、実際の税務調査の対応方法や修正申告・更正の請求の作り方、その後の事業年度の処理などについても、詳しく解説してくれています。
読み方
こちらの本は、「あったら安心」「必要になったら購入しよう」という位置づけでOKです。
というのも、実務でそれほど複雑な修正申告・更正の請求を作ることは、初めのうちはあまり多くないと思うからです。
とはいえ、ここまで詳しく解説してくれている本も多くないのが実情です。
税務調査に関与する機会がある人は、そのあとの修正申告・更正の請求も見据えて、思い切って買ってみても損はないと思いますよ。
その他の難しい項目
ここまで、法人税を実務で使う人におすすめの、実用的な本をすべて紹介してきました。
これらの本を一通り手元においておけば、もし「税務が初めてなんです」「これから会計事務所に転職するんです」という人でも、かなりアドバンテージになると思います。
とはいえ、網羅できていない難しい項目がある
とはいえ、法人税には「その項目だけで分厚い本が1冊できる」というほど、難しい項目・特殊な項目があります。
それが、以下の項目です。
✓特に難しい法人税の個別項目
・組織再編税制
・移転価格税制
・国際税務
・連結納税
これらの項目については、この記事で紹介した本とは別に、必要に応じて個別に武器を揃えておくことがおすすめ。
組織再編税制のおすすめ本
「組織再編税制」と聞くだけで思わず構えてしまう、そんな実務家も多いと思います。
そこで、M&A税務アドバイザーとして、税務デューデリジェンスやストラクチャリングといった業務を行っていた経験を基に、おすすめの本を厳選して4つ、こちらの記事で紹介しています。
本記事と同様に、レベルや目的に合わせて紹介しているので、組織再編税制も気になるという人は、ぜひチェックしてみてくださいね。
移転価格税制のおすすめ本
続いて特殊な項目として、移転価格税制が挙げられます。
大抵の会計事務所・税理士法人では、移転価格は個別に部門・部署・チームが作られるくらい、法人税の中でも特殊な項目です。
こちらについても、5大総合商社や大手金融Global Tax Manager、さらには会計税務コンサルの実務経験を基に、厳選して6冊(+1冊)をこちらの記事で紹介しています。
制度を理解するための本から、移転価格文書の作成方法まで、移転価格の一連の実務が分かる本を紹介しているので、移転価格初心者の人は、特にチェックしてみてくださいね。
国際税務のおすすめ本
そして、今後の更なるグローバル化により、さらに重要性が高まると言われている国際税務。
この分野は特に、特殊な調整や計算方法が求められる項目であり、かつ、時代の流れにより制度自体が大きく変わりやすい分野であるため、苦手とする実務家も少なくありません。
(例えば、以前働いていた4大税理士法人でも、国際税務をしっかりと理解できている人は、決して多いというわけではありませんでしたよ。)
そこで、4大税理士法人マネージャー、総合商社で国際税務の全社講師、さらに大手金融機関Global Tax Managerの経験を基に、実務で国際税務の知識が求められる人に向けて、実用的なおすすめ本を、こちらの記事で紹介しています。
特に、国際税務の分野の中でも「外国税額控除」「租税条約」「タックスヘイブン」といった、特に特殊な項目に関するおすすめ本も紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
連結納税のおすすめ本
そして最後に、今後大きな改正が予定されている連結納税。
これまでは、計算の煩雑さや申告までの実務的な手間から、それほど普及が進んでいないとも言われていました。
ですが今後、「グループ通算制度」に移行することで、「連結納税制度」の要素を残しつつ、実務的な煩雑さが解消されることになるため、連結納税の知識や考え方が、より重要になるともいわれています。
さらに、今後行われる税務調査においては、過去に連結納税を適用していた事業年度に関する税務指摘ということもあります。
今後、連結納税やグループ通算制度を適用するような「大きな企業を担当してみたい!」という人は、こちらに連結納税に関するおすすめ本を紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
3つに厳選しているので、初心者の人でもこちらを選んでおけば、損はないと思いますよ。
さいごに
さいごに、今回紹介した本のおさらいです。
初心者におすすめの本① | 法人税申告書のしくみとポイントがわかる本 |
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初心者におすすめの本② | イチからはじめる法人税実務の基礎〔第4版〕 |
初心者におすすめの本③ | 図解 法人税(令和元年版) |
初心者におすすめの本④ | 第4版 基礎の基礎 1日でマスター 法人税申告書の作成 |
実務で絶対に必要な本① | 法人税 決算と申告の実務 令和元年版 |
実務で絶対に必要な本② | 法人税基本通達逐条解説 (九訂版) |
申告書の作成方法① | 瞬殺! 法人税申告書の見方~ここだけ見ておけば大丈夫! ~ |
申告書の作成方法② | 令和元年版/STEP式 法人税申告書と決算書の作成手順 |
申告書の作成方法③ | 法人税別表4、5(一)(二) 書き方 完全マスター 第4版 |
申告書の作成方法④ | 令和元年6月改訂 別表四・五(一)を中心とした 法人税「申告・修正申告・更正後の処理」の実務Q&A |
どの本を買っても、損はない1冊を選んだつもりです。
ぜひ、自分の環境や仕事内容・目的に合わせて、「自分の武器」を手に入れてくださいね。
今回は以上です。少しでも実務の役に立つ本が見つかれば嬉しいです。
ありがとうございました。